2011年6月28日火曜日

迷走記 #2

**** お店ブーム ****

さて。前回から。
だいぶ間が空いてしまったが。
仕事なんて好きな事しようぜーと。
悪魔にささやかれ、
迷走がスタートしたのが前回。

はて。好きな事。
好きな事っていってもねえ。
何をするか…。

大体。何をしようか。
とか言っている時点で。
大して『好きな事なんてない』
ということなので。
そういう人は本来。
前職と同じものを選び
『キャリアの継続』という、
世の鉄則に従えばよい。
ま。これは。
考えればごもっともな話で、理にかなっている。

しかーし。
人間。ちょっとした事でネジが1本緩むと。
ガタガタガタッ!って崩れ。
そういう当たり前の考えさえも。
スコンッ!と。抜けてしまう。

で。私も。ひょんな事から。
ネジが外れてしまった。

そうだ。どうせ働くなら。
好きなものに囲まれて働こう!
というわけで、
第一次迷走期。
お店ブーム到来…。

販売業。やったことないのに。
こだわり物のセレクトショップなんかで。
店員になろうかと思ってしまった…。
で。目ぼしい店に行っては。
ウーン。店員が皆20代かあ…。
年齢オーバーで落ちるから辞めよう。
とかいった偵察を。
3週間くらいやっていた(アホか!)。

次。職人ブーム。
やっぱり。
なんか物を作る人になりたい。
漆職人とか?靴職人とかパン職人とか?
37歳で弟子入りはあり得んでしょー。
って思ってはいるが。
なんせネジが外れている。
『○○、職人』とか検索すると。
村上龍の『13歳のハローワーク』が現れた。 
ここで一瞬、我に返ったが、
またネジがボトっと落ちた…。

ま。手近に偵察できるところから。
というわけで。
パン職人が選ばれたのであるが。
あちこちのパン屋を偵察しては。
製造スタッフ募集を探すこと。
再び。1ヶ月くらい。

こじんまりしたパン屋に。
未経験も可というのを発見。
店にある応募用紙を貰ったらなんと。
『うちの店は完全菜食主義です。
スタッフにもそれを求めます。
応募前には以下の本を最低2冊、
読んでから来てください』と但し書き。
『小宇宙と人体と云々〜』
みたいなノリの本がズラリ。
ヒョ〜っ。なんだかねぇ…。

まあ。そのへんの趣向には目をつぶって。
突入の機会を伺っていたら。
なんと店長急死。
店存続の危機なので当然スタッフ募集も終わる。
(店は後に閉店した)
そして。私も。
あれ?一体なにやってたんだろ?
と。我に返ったのだけれど…。
ホリエモンの収監決定!との記事を見て。
そっかー。
同世代のホリエモンも修行時代に入るのねえ。
私も収監されるつもりでパン屋で修行するか。と。
わけのわからん発想に…。

しかーし。
『パン。別に仕事じゃなくて
自分で作ればいいじゃん。家で作りなよ』
という友達の一言で。
まあ。そっか。と。
パン屋ブーム、あっけなく終焉する。

次。編集ブーム。
気になる雑誌の編集者採用情報を見ては。
未経験可を探す。

次。花屋、園芸店ブーム。
また気になる店に行っては。
偵察に行、き張り紙を見るという生活。
このブーム。
また1ヶ月くらい。

そのあとまた。
家具屋ブームとか、
カフェブームとかもあった。

編集ブームと園芸店ブームとカフェブームでは。
はた迷惑なことに。
数件応募してしまった。
ま。当然。落ちたのだが…。
送りつけた担当者の皆様。
すいませんでしたー!

いやー。今思うと。
なんでこんな事していたのだろう。
と。思うことばかり。
人間って狂っている時は。
本当に自覚がないです。

今。この瞬間も。
後々。考えてみると。
はずかしーっ!
っていう事をしているのだろう。
そう思うと。
あー。ホント。気が狂います…。

若いころや過去を思い出すと。
いつだって、全てが小恥ずかしいのも。
まあ。同じような事で。
一種の狂いなのか…。

このあと。
さらに迷走します。

次回。やけっぱち期。到来す。


2011年6月2日木曜日

迷走記 #1

**** 迷走スタート ****

やっぱ。
履歴書は写真でしょー。
この人に会いたいか、会いたくないか。
文字より写真。
やっぱり人間。
なんやかんや言って。
きっかけを掴むには見た目が左右する。

手鏡に向かってニコっ。
目が笑っとらんっ!
ニカーっと笑って、顔筋をほぐす。
そして。再び。ニコッ。
ま。こんな感じか。
三脚を立て、レフ板を自分で持ち、
セルフタイマーをセット。

昔。某男性ファッション誌の。
カメラマンアシスタントを1年ほどしていたので、
写真の撮り方はある程度知っている。
ってまあ。
顔の作りは変えられんので。
写真にも限界はあるのだが…。

ともかく。この一枚が。
面接まで行けるかどうかの鍵になるー!
という妄想にかられているわけだ。

タイマーが点滅する。
チカ。チカチカチカー。
来るぞ〜。カシャッ。
ンー。履歴書にしては笑い過ぎ。
もう一回。
ニコッ。カシャッ。と。
すること、なんとまる1日。
ま。こんなもんだろう。
というものが出来た。

              *  *  *  *  * 

そう。無職になったのだ。
ま。節目の度に一旦、無職になるので。
とびきり特別な事ではないし。
まあ。なんといいますか。
一時の無職はそれなりに貴重である。

つまり。
会社勤めを一旦始めた者にとって。
1ヶ月以上の休みどころか、
10日以上の連続した休みだって。
会社を辞めないかぎり、
60歳になるまでお預けなのである。
考えてみればなんともおそろしい話だ。

遡ること数ヶ月前。
ドイツの現地企業で働いていた。
しかし。
人っ子ひとり知らないドイツの田舎街で。
ずっと生きて行く覚悟もなく。
やっぱり。日本に住みたいなー。
そうだ。日本で職を得よう!と思った。

ドイツを撤退すべく、
日本に向けて就職活動。
現職と遠からず的なものと。
まあ。英語を使うという事以外、
現職とは全く関係ないものをネットで3件応募。
まあ。多少なりとも経験を生かして。
っていうやつである。

結果は全滅…。

ま。平社員ごときで。
いくら飛行機代を自分で払うつもりでも。
ドイツにいる人に面接に来て下さいとは言いにくいよな。
そうだよな。
距離があるからな。距離が…。
いや。キョリ。というか自分に問題があるのでは?
とも頭をよぎったが。
まあ、8割方くらいはキョリのせいにした。
というわけで、
ドイツの会社を辞めて日本に戻った。
そんで。無職になった。

そしたら大地震が来た。
人が生きるか死ぬか。
明日は電車は普通に動くのか動かんのか。
という時に。
『御社の求人を見たんですけど〜』
なんていう発言をすると。
マヌケに聞こえるので。
とりあえず、日常が戻った時のために。
履歴書の準備を始めたというわけだ。

生きるか。死ぬか。
水が危ない!買い占めろ〜!
余震だ。放射能だ。
エイッ。ヘリから一号炉に海水投下!
炉よ。冷えてくれー。
と。皆が祈っている時。
そう。私は。1人、部屋で手鏡片手に。
セルフタイマーを押しては。
ニコ〜っと笑ってカシャ。
と、やっていたのだ。
さすがに我ながら、この非常時に。
このマヌケすぎる光景は如何かと思ったが…。
ま。でも。世の中は。
いつだって両極の世界が存在する。
そういうものだ。

写真が撮り終わって翌日。
さーて。画像修正。
まー。便利な世の中だこと。
ちょっと絵画チックなモノクロ写真が出来上がった。

ま。履歴書の写真って、
好き嫌い、デザインが云々。
っていう話ではないけれど。
やっぱり。
自分が納得できないと人に渡せない。

この写真。
常識的には邪道かもしれないけど。
でも。世の中はいつだって。
正解は一つ以上ある。
そういうもんだ。

ま。そんなふうに。
一生懸命写真を作り込んでいるのも。
実は狙ってる会社があった。
社風が欧米並みに自由。
ゲームやソーシャルアプリなんかを作るIT系の会社。
職種は前職と全く関係がないわけでもないかんじで。
多少ながらアピールできる事もありそうな、ないような…。

履歴書は指定のエントリーシートを使う。
当社の製品で一番よいと思うものとか、
その理由を述べよ。とか。改善点を述べよとか。
まー。なんせ質問事項が沢山ある。
その質問に試行錯誤して書き上げること5日。
1週間がかりでエントリーシートが出来た。

『一番よいと思う製品』もなんとか書いたが…

                        * * * * * *

「なーんかさあ。製品。全然興味ないんだよねー」
「じゃあ。応募しなければいいじゃん。
だいたいマユゲはいつもそうなんだよー」
行きたくないっていいながら行くの。
ドイツだってそうだったじゃん」

そういえば。そうだったかも…。
「でも。服装が自由なの〜」
「服装が自由なところ他もあるよー」
「ない。日本。あんまない…」
という会話をあちらこちらですること1週間。

結局。1週間かけて書いた履歴書は。
出さなかった。
そう。ここから私の迷走は始まった。

生活のために金を稼ぐという目的以上に、
好き嫌いを持ち出した。
そして。
なんだか、幼稚な方向へと舵が大きく切られた。
そう。『家族を養う』という立場にない私には。
責任というブレーキ部品も欠如している。

そんなところへ。
好きなことしようぜー。ベイビー。と。
悪魔がささやき始めたのであった…。