2011年7月26日火曜日

迷走記 #5

* * * * ゴムボートに乗った〜! * * * *

諸悪の根源は夢や希望だー!
そんなもんが人を不幸にする。
じゃあ。
夢や希望は捨てようじゃないか。

と。やけっぱちで応募し、
働くことになってしまった
巨大スーパーの入り口での立ちんぼの仕事。
参照: 迷走記 #4
アメリカ人ボスに。日本語で。
『アナタ、笑顔、足りない!
アナタの顔、オソウシキデス〜!』と。
言われ続けるもと。
5秒に一回『いらっしゃいませ』を叫ぶ × 8時間
 × ン年の人生は辛すぎる。
と。そそくさと退散し、
またプーになったわけだが…ここで問題が。

私は今。実家に居候している。
21歳の時には。もう。
さっさと家を出たので、
16年ぶりの同居である。

しかーし。
21歳で自立したはずの娘が。
いい年こいて家にいて、
プラス、無職ときた。
親としては。イライラっとしていたが。
やっと働きに出てくれた。よかったー。
と思った矢先であった。
というわけで…。
バイトとはいえ、
3日で辞めたとは言えなくなってしまった…。

そう。世のリストラされたお父さんが。
背広を着て、勇ましく。
『いってきまーす!』と家を出て。
公園に向かうように。
私も同じ状況に陥ってしまった…。
なんと。架空出勤である。
まさか。
自分にこんなことが起こるとは…。

まあ。バイトでシフト。
ということになっているので。
普段着で、気が向いた時に。
9時間くらい家を空ければよいわけで。
背広を着たお父さんよりかは恵まれているが…。
(どういうレベルの話だっ)

それを聞きつけた友達なんかは。
有給取るから!つきあうよ!
とか言ってくれたりして。
ほんと。持つべきものは友達かもしれない。

で。連日。34℃の猛暑。
外にいられないので、
カフェとかに行ったりするわけだが。
やはり。都会でブラブラするには。
毎日。それなりに金を遣う。

暑い。死ぬーっ!→カフェへ
腹減ったなあ→ランチ
ふらっとビックカメラ→分割でmacを買ったり
店をウロウロ→ 本とか服を購入したり。
暑い。死ぬー!→区民プールへ行ったり
(プール道具をバイクに積んでいる)
疲れた〜→再びカフェへ。とか。

毎回。架空出勤がこんな調子である。
来月こそはこんな生活じゃないはず。と。
買い物は、いつも。来月を当てにし。
すべてカードで2回払い。
しかし。
どんどん減っていく銀行残高を見る度。
これはいよいよ。まずいなー。
というかんじなのだが…問題は。
なんだか。
生活レベルが落とせないのだ。

そういや。
小室哲哉が詐欺で逮捕された時。
生活レベルを落とせなかった…。
と。言ってたっけ。
規模は違いすぎるけれど。
なんだかわかるような気がした。

とりあえず。カフェにいる時は、
mac を持ち込み、職探し。
毎日、3時間くらいは職チェック。
で。まあ。私の職種と、
年齢と経験値のバランスなどの事情により。
どうしても派遣になってしまうのであるが。
週に5, 6件のハイペースで応募し。
で。その間に。
派遣会社数社に登録に行ったりしていた。

そんなところへ。ニュース。
                * * * * *
牛丼店で強盗。容疑者は。
妻には。夜中、働いていると嘘をつき、
奪った金は『はい。給料』といって、
妻に渡していた。と供述している。
               * * * * *

泣ける話である。
が…。ちょっとこれ。
人ごとじゃないかもーっ!

日が経つにつれ。
最初はなんとかなっていた架空出勤も。
数週間経つ頃には。朝が来る度。
「朝が来てしまった…。さて。今日はどうすっかなあ…」と。
もう。さすがに限界に。
どうにかせねば〜。と思うものの。
仕事は。掴みそうになる度。
あと一歩でスルリと手から抜けていった。

明けない夜はない。
止まない雨もない。

物事には。どんな事柄でも。
終わりは必ず。あるっ!
ゴールはどこかにある…。

一日中、外をフラついて。
金もあちこちにバラ撒き。
死ぬほど汗をかいて家にもどると。
居間のテレビがついていた。

                * * * * *
こちら、東京にある○○植物園です。
このような珍しい植物もあるんですねー。
こちら、入場は無料となっておりまーす!
                * * * * *

「ここどこ?」と私。
「小平市だって」と。マユゲ母。
「フーン」と。私。
(ウーム。ここ。明日の出勤場所にいいかも…。植物好きだし〜)

まさか。
同じテレビを見ている娘が横で。
『おー。ここは明日の架空出勤場所にっ!』
なーんて。こっそり思っているとは。
マユゲ母は、夢にも思ってなかろう。
かわいそうにねえ。
数ヶ月前は。
『娘はドイツで働いているんですぅ〜』
って周りに言ってただろうけど。
ホントは、今。君の娘は無職なんです…。

ま。知らぬが仏とはこのことか。

                * * * * * *
居間を出ようとしたその時。
マユゲ母が言った。
『ちょっとーっ。アンタ、家にお金。
働いているんだから。○万円入れてよね」

「ああ。あとで渡すよ」と言って、
2階の自分の部屋へ向かった。

お金ねぇ…。
階段をのぼりながら
牛丼屋へ強盗に走ってしまった人の事を。
ちょっとだけ想った。

自分の部屋へ入ると携帯が鳴った。
「あ。○○会社です。本日は登録ありがとうございました」
(おっ。派遣会社だ)
「早速ですが、来週から1週間の短期のお仕事がありまして。
お願いできないかとー。デジカメのテストのお仕事なんですけど…」

キター!
仕事がキターッ!
これは毎日、街をふらつき、お茶して。
セールでお買い物して、macまで買い。
無職なのに、一生懸命、
日本経済をまわしたご褒美だー!
昨日。ブ○っクス・ブ○ザーズで面接用のシャツを買ったからな。
あれがよかったのかな。
もう一枚買えば、もう1週間仕事あるのかしら〜?
それとも。もっと高いもの買えば。
一ヶ月の仕事が来るのか〜?

大海原に落っこち。
(自分で入っちゃったんだけど…)
行き着く先もなく。方向も見失い。
溺れそうだったが。
通りかかったゴムボートになんとか。
手がひっかかった。
助かった〜。

そして。なんとなく。
大きい船がどこか近くまで。
来ている気配があった。
なにかが近い…。

ま。ともかく。
仕事や金に困った時は。
金を遣えということだ(ホントか?)。
世の中は循環。循環。
世の中は。
まわせ。まわせ。

では。とりあえず。
ゴムボートに乗り。
とあるメーカーのデジカメテストをして参ります。

2011年7月14日木曜日

迷走記 #4

**** やけっぱち、実践す ****

さて。
やけっぱち期が到来し(参照: 迷走記 #3)

だいたい。
自分の可能性とか。
信じるからいけないのだ。
私は。自分には何もないと思い、
私は。そんな自分で満足したい!
人間。多くを望まなければ。
幸せなのだー。

というわけで…。
とある単純&肉体労働系に応募した。
面接官に。
「ハッ !? ソフトウェア開発という業界からなぜにうちへ?」
という不信感を大いに持たれつつも、
ま。とりあえず、人足りないから。
アルバイトスタートで…。
みたいなかんじで。
あっさりと受かった仕事。

それは。
とある外資の巨大スーパー。
レジ係、商品の陳列係、お掃除係、
お肉をずっと切っている人。
お魚をずっと切っている人。など。
まあ。色々な仕事があるわけだが。
店の入り口担当になってしまった。
『いらっしゃいませ』系…。

ウーン。笑顔を振りまく接客か。
かなり向いていないと思われるので。
裏でお肉を切ったり、
手を動かかしている方がまだよいのだが。
なーんか。いやな予感…。

遡ること、16歳の夏。
ファミレスのウエイトレスとして働いた。
『デ○ーズへようこそ!』という、
決まり文句があったのだが。
そんな恥ずかしいこと事言えるかよー。と思って。
言わないまま働き通した15の夜。
じゃなかった。16の夏。
そんな人が20年後にまたマニュアル接客。
果たして、できるのか?!

初日はオリエンテーション。
バイトとはいえ、
20枚くらい、契約書に色々サイン。外国っぽい。
それから。
ドラマ仕立てな教育ビデオを数本、
4時間くらい見るのであるが…。
これが。アメリカ企業だけあって、
ドラマがやっぱり海外ドラマ風。
なんかこう、映像のの雰囲気が。
『ビバリーヒルズ高校白書』とか『フレンズ』
の中に出てくる、そのものなのだ。
いやはや。アメリカ。

そして。
従業員の控え室に行くと。
白人、黒人、ヒスパニック、アジア系にインド系と。
肌の色も、まあ様々。
従業員、超多国籍。
で。皆、日本語ペラペラ。
かつての日本にこんな光景があっただろうか?
ま。国際的になるのはいいことだ。
民族は単一だと。
不健康な社会になりやすいのだ。
多国籍。歓迎!

仕事着は襟付き指定があるので、
ポロシャツを用意することに。
それなりに値は張るが、
気に入ったものを買った。
フフ。来月給料入るしね。と。
カードでガツっと購入。
テキトーな服で一日中働いたら。
なんか。
哀しい気分になるんじゃないかと思い。
気張ってみた。

* * * * そして。勤務開始 * * * *

さて。仕事であるが。
何をするかというと。
入り口でひたすら。
『いらっしゃいませー!○○を拝見しまーす』(注1)と叫ぶ。
注1:とあるものがないと入店できない)
もしくは。
『クーポンをどうぞー!』とクーポンを配る。

それをひたすら、
5秒に一回叫ぶこと5時間。
それだけ…。
すみませーん。
これ。機械じゃダメなんですかー?

叫ぶのでのどがカラカラになるのだが。
客の前で水を飲むのは禁止されている。
よって。
水を飲めるのは指定された休憩時間のみ。
休憩は5時間勤務の時は一回だけ。15分。
それが水を飲める唯一のチャンスである。

入り口なので野外みたいなもの。
夏。5秒から10秒に一回叫ぶ。× 5時間。
水飲みてー。
もー。拷問…。

すると。
現場監督のアメリカ人のおっさんが。
ツカツカーって、歩み寄ってくる。
(日本語ペラペラ)

アナタ、笑顔が足りない!
声が出てない!
顔が暗いデスー!

アナタ、お葬式ですよー。オソウシキーッ!
スマイルー、声!!
そして。
アメリカ人ボスは去っていった。

ボスの方を見ると。
ボスは『キーッ!』と。こちらを見ている。
ああ…。

いっそう声を張り上げる私。
声が低いのもあって、
声は雑踏に消えてしまう…。
そして。凡人には。
『叫ぶ』と『笑顔』は共存しない。

すると。またそのアメリカ人ボスが。
大股歩きで、ツカツカーって。
お尻をプリプリ振りながら私のところに来る。

「ココノポジション。一番タイセツなのナンデスカー!」
1に笑顔! 2にスマイル! 声!
アナタソレナイ!

『…… 』
果たして。アメリカ人に、
『1に笑顔!2にウンチャラ〜…』
って日本語で怒られた日本人が
この日本にどれだけいるだろうか?

はあ…。
私はアメリカをナメていた。
だって。
この間まで住んでたドイツでは。
スーパーの店員なんか。
座ったままレジやっているし。
『いらっしゃいませ』もない。
客の前でクイクイッと。
ペットボトルのジュースだって飲む。
ブスーっとして業務をこなし。
列をなしている次の客は。
『ハイ、次ーっ!』とコワーイ感じで呼ばれる。
客と口論だってする。

昔。ベルリンで。
50ユーロ札で数ユーロの買い物をしようとした客に対して。
「おつりなんかないわよーっ!」
ってレジの人が怒って、
客と喧嘩になっているのを見たことがある。

しかし。サービス業の国。
アメリカは違うらしい。
そういや。オーストラリアのスーパーでも。
店員はいつだってスマイルであった。

ま。ともかく。
この入り口のポジションは担当が何人かいて、
日本人じゃない人も数名いるわけだが。
長い人だと4年もそのポジションをずっとやっている。
しかも、フルタイム社員。
入り口担当で4年。
皆。色々な事情があるのだろうが。
叫び続けること、
5秒から10秒に1回 ×8時間 ×4年は。
忍耐という面で、本当に頭が下がる。

しかーし。ごめーん…。
私にはその忍耐はない。
それを飲み込む、諸事情もない。

今。これを選んだら。
これをやる人生になる。
でも。これを選ばない人生もあるはずだ。
私は…。ごめーん。ヘタレです。
抜け出したい!

* * * * 翌日 、再び勤務 * * * *
日曜日。客足がすごい。
相変わらず、私は。
アメリカ人上司にウケは悪く。
「ココのポジションは店の顔でデス!
暗い!スマイルー!声ー!ソレはオソウシキーッ!」と。
言われ続け、
魔の『5秒に一回叫ぶ × 5時間』は終わった。

シフトを見た。
まだ。来週のシフトを組まれてなかった。
今だ!シフトを組まれたら辞められない!

3日間、お世話になった人、
数人に頭を下げまくった。
辞めた…。

結局。私には。
『自分にはなにもない』と思う能力も。
『多くを望まず満足する』という能力もなかった。
青春ノイローゼは治せなかった。
参照: 迷走記 #3

しかーし。
これがきっかけで。
私の尻に火が付いたのだ。
前職と同じ職業にもどったるーっ!

さて。次回。
私の快進撃はスタートするのでしょうか?

そして。
やけっぱち期の代償として。
お値段の張るボロシャツのカード請求が。
来月。来るのでしたー。はあ…。

p.s. こうやって。
また、履歴書に載らない履歴が増えるわけです。
(参照: 履歴書に載らない履歴

2011年7月8日金曜日

迷走記 #3

**** やけっぱち期到来 ****

前回のお店ブームで(参照: 迷走記 #2)。
頭おかしい真っ盛りに、
色々な所に送りつけた履歴書が。
ポロン、ポロン。と。
毎週のように戻ってきた。

これ。返ってくると。
なんだか。
ものすごーく。恥ずかしい。
あちゃーっ。
そういえば。
こんな所、送ったよねー。
と思ったり。
あー。まあ。そりゃそうだよな。
とか思ったり。
もう毎日が、アチャチャチャ〜っ。
というかんじ。
で。さすがに、考えた。

だいたい、いい年こいて。
やりたい事とか、好きな事とか。夢とか。
アホじゃなかろうか。
ムムっ。
これは、青春ノイローゼ(注1)だ。
そうだ。諸悪の根源は。
夢とか希望とか、理想じゃなかろうか?
(注1)みうらじゅんが提唱したビョーキの名。否定的な意味で、
いい年こいてまだ『青春』を卒業できていない大人のこと。

もっと違う可能性とか。
今までと違う人生とか。
自分にはもっと出来る何かがある。
と思っているビョーキ。

しかしそれは。
私たちが、20代のころ。
実は。誰もが持っていた、
『青春』という、ある種のノイローゼ。

が。それは年と共に薄れ。
30代ともなれば。
ノイローゼを実現できた人は。
いわゆる『成功者』であるが。
ノイローゼを実現できなかった人は。
等身大の自分を受け入れることになる。
で、ここで受け入れることができた人も。
ある種の成功である。
しかし。私は。おそらく。
この辺りの移行を失敗している。

そうだ!
諸悪の根源は。これだ!
自分に何かがあると思っていること。
夢とか希望とか理想が。
人を不幸にしているのでは?

                           * * * * *
テレビをつけると。
『あなたに夢はありますか?』
というテーマをやっていた。
コメンテーターは中村うさぎ。
彼女は言った。

「だいたいねえ、
夢とか言ってるんじゃねーよ。
夢なんて捨てちまえ!
人にはねえ。
追いかけてよい夢と、
追いかけちゃいけない夢があるんだよ!」

ハハーッ!
うさぎさま〜。すみませんっ!

                          * * * * *

自分には出来る何かがある。という幻想。
自分にはもっと可能性がある。という理想。
自分にはやりたい事がある。という妄想。

よしっ!私はそれを捨てる。
私にはなにもない!

とある外資の体力&単純労働系に応募した。
そして。
面接した当日。合格の連絡。
ちょっと不安になって、
○○社、仕事。とかネットで調べてみてみると…。

あんなところで働く奴らは、クズだ。
どこにも行くところないから、
あそこで働いてんだろ。とか…。

ヒョ〜っ。もう。すんごい言われよう…。
しかし。クズ。
これぞ私が望んでいるものではなかろうか?
わたしは自分をクズと思い。
クズで満足したい!

私は貝になりたい!
いやちがった。
クズになりたい!
(↑こう言ってる時点でクズと思っていないわけで…おこがましい。)

そして。勤務日は来た。
やっぱり、人間。
クズになるのも。
無欲になるのも大変で。
煩悩には。
なかなか難しかったのである…。

次回はそのびっくり勤務を。