2012年3月25日日曜日

白髪を巡る冒険と考察

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「カツラが世の中に受け入れられないのは、
ないもの『ゼロ』を無理矢理あること『1』にするからで〜、
で。化粧が受け入れられるのは。
元々あるもの =1に対し
『1+α 』であるからだと思うのよね。
で、だよ。じゃあ白髪染めはどうなのか?というと。
白という無色は、ある意味『ゼロ』なわけよ。
で。それに無理やり黒(注1)を入れるから、
(注1) ここで言う黒は黒だろうと茶であろうと同じ。
カツラと同じ『 0から1 』のプロセスで。
実は。構造的にカツラと近いわけよ、でね…」

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またやっている…。
代官山、深夜1時のカフェ。
クラブに行く前に『ちょっと茶』で集う人々や、
ソファーに座って読書をするカップルがいる店内で。
(ってか、深夜にわざわざ読書しにカフェ来るのか〜 ?まあ。近所の人なんだろうけど)
白髪論を熱く語っているのが…私。

そう。私。基本的に怒ったり熱くなったりしないのだが
こと、白髪のこととなると熱いのである。
というのも…。

25歳で両サイドの内側に数十本ずつ出始め。
31歳ではもう白髪染めに手を出さざるを得ない状態に。
34歳でその切なさに耐えきれず、白髪染めを辞め…。
35歳で局地的な白髪率は30~40%を超えている状態に。
もう。こと白髪との戦いに関しては。
50代後半並みの経験値があるのだ。
(つまり。成人してから全部黒い髪が生えて来る時代が、
20歳から24歳の4年間しかなかったことになる。ヒョ〜っ。)
で。この件になると
染めればいいじゃん的な軽いノリの周りに。
「真っ黒なテメエらに何がわかる。てやんで〜っ!」
という心境になってしまうのである。

私が思うに男性の白髪は。
坂本龍一を筆頭に、それなりの地位を得ている。
(↑今はそれなりの年だが、早くからグレーだった)
オシャレにキメようと思えばそれなりにできるし、
実際、そんな男も街中にいたりで。
逆に白髪染めで黒いほうが引くらいである。
(加山雄三とかビミョ〜よね…)

で。ハゲはハゲで。『全部剃る』という形で、
オシャレ坊主という地位を獲得した感がある。
(竹中直人とか、ライムスター宇田丸とかね)
もしくは前頭からハゲた人は。
ソフトモヒカンみたいな山田五郎風にしたりと。
それなりの道がある。
しかし、女性の30代の白髪はキビしい…。
染めればいいじゃん。という白髪未経験の諸君。
それは。甘いのだよ…。

そう。白髪の問題は常に根元との戦いに尽きる。
染めた所で1週間もすれば根元は白くなる。
私に言わせれば、
白髪染めで隠しきれている人は皆無に等しい。
(電車の中で座っている人を頭上から片っ端、チェックしてほしい笑)

では。バーンと出ている白髪と。
根元が白いのはどちらが切ないか…。
『あ。白髪だったんだ。この人…』
と。後追いで知るのは切ない…。
それが美人だったりするともっと切ない。
黒髪ワンレンストレートの女性が、
振り返ったら結構なオバサンで。
『あ。すみません』って思ってしまうのと似ている。
切ないのである…。せつな〜い!

バレるのであれば。
最初から露出している方がいいのではないか?
で。34歳の時、私は白髪染めを辞めた。
それからは皆に会う度『ハア…』とか『すごいね…』と。
言葉にならない感想を数年言わせていたのだが、
その度に『何が言いたいんじゃー!オリャ〜っ。
すごいという言葉を使わずに言ってみろ〜!』
と思ったもんである。
(すごい。って言葉は便利な分、その含みの多さがなんとも相手を攻撃してしまうので私は気をつけよう思ったが、やっぱり便利だから使っている…。因果応報。周りに言ってしまっている言葉は自分にも返ってくるのである笑)

で。当時の私の目標が。
白髪でもカッコイイ女性の第一人者になってやろう。
というものだった。
服装もカッコよく人一倍気をつける。でも髪は白髪。
化粧も当然する。1 + αだからね。これは切なくない。
よく誤解されるのだが、
自然体を見てほしい。とかそんな自然主義は毛頭ない。
人は自然のままではキタナイ。と言って、
整形を重ねた中村うさぎだって私は支持するくらいだ。

つまり。私の矛先は自然とかそういうものでなく。
白髪染めの隠しきれない切なさであって。
白髪でも格好よく生きれるところを世間に証明してやる。
パイオニアになるのじゃー。ということだけだった。

だが…。ある日…。友人が。
「女が白髪ってさあ…鼻毛出して歩いてるのと同じだよね」と。

鼻毛ですかーー!ハナゲ〜っ。

なんと。この一言で。
私の戦っていた糸があっさり切れてしまったのだ。
世間と戦うことにも疲れていたらしい。
その3日後。美容院に行き。
『白髪が出てもわかんないくらい全体を明るくしてくれ』と。

私の頭は宝塚色になった。
帰り道、私の志を知っていた友人に連絡。
「もう髪の毛、宝塚だから…」
「えーっ。白髪で日本を変えるんじゃなかったのー?笑」

いや。私は。変えることができなかった。
私と白髪と世間とのながーい戦いは終わった。
そして。気分はすこぶる軽くなった。

           * * * * 白髪論、力説後 のカフェ* * * * *

「いやー。でも。マユゲさん、若返りましたよ」と。
年上なのになぜかいつも敬語のA君が切り出す。
「ほんと。ほんと。その鼻毛って言ってくれた友達に感謝だね。
よかったよかった」とN子。
「ま。女の人は黒くたって染めるわけで…、
白いから染めないっていうのも。おかしな話だよね。
だいたい髪の毛あっての話でしょ」と。
30代で禿げ、頭を全部剃っている J が言った 。

あれ〜。キミ達、私の構造の話、聞いてなかったんか〜っ?
というくらいあっさりした反応だったのであるが。
ともかく。私はこのまま宝塚頭で生きて行くことにした。
しかーし。
問題はこれ、いつ戻すのか。ということである。

70歳を超えた母は未だに染めていて、
90歳を超えるうちの婆さんも未だに染めている。
両者共、顔と頭が不自然に分離して見苦しく、
妖怪チックなのは言うまでもない。
そして。
世の中にはこんな人々が沢山いるのも事実…。
(皆、見慣れすぎ麻痺しているからなんも思ってないだろうけど)

まあ。私は白髪で日本を変えることはできなかったけど。
いつか白髪でもイケてる世の中になればいいなあと思う。
そんな日は来ないって?いやいや。
チョンマゲとか、あんなあり得ん髪型が、
カッコよかった時代もあったのですよ。
世の中の物差しは必ず時代と共に変わるのです。
妖怪チックなバアさんたち(稀にジイさんたち)が
解放される日もいつかきっと来る。
(まあ。今の人たちには間に合わないけど…)

しかしこれ…。
私と白髪との戦いは終わったのでなく。
染めてしまった今。
始まったばかりなのかもしれない…。あーあ。