2011年6月2日木曜日

迷走記 #1

**** 迷走スタート ****

やっぱ。
履歴書は写真でしょー。
この人に会いたいか、会いたくないか。
文字より写真。
やっぱり人間。
なんやかんや言って。
きっかけを掴むには見た目が左右する。

手鏡に向かってニコっ。
目が笑っとらんっ!
ニカーっと笑って、顔筋をほぐす。
そして。再び。ニコッ。
ま。こんな感じか。
三脚を立て、レフ板を自分で持ち、
セルフタイマーをセット。

昔。某男性ファッション誌の。
カメラマンアシスタントを1年ほどしていたので、
写真の撮り方はある程度知っている。
ってまあ。
顔の作りは変えられんので。
写真にも限界はあるのだが…。

ともかく。この一枚が。
面接まで行けるかどうかの鍵になるー!
という妄想にかられているわけだ。

タイマーが点滅する。
チカ。チカチカチカー。
来るぞ〜。カシャッ。
ンー。履歴書にしては笑い過ぎ。
もう一回。
ニコッ。カシャッ。と。
すること、なんとまる1日。
ま。こんなもんだろう。
というものが出来た。

              *  *  *  *  * 

そう。無職になったのだ。
ま。節目の度に一旦、無職になるので。
とびきり特別な事ではないし。
まあ。なんといいますか。
一時の無職はそれなりに貴重である。

つまり。
会社勤めを一旦始めた者にとって。
1ヶ月以上の休みどころか、
10日以上の連続した休みだって。
会社を辞めないかぎり、
60歳になるまでお預けなのである。
考えてみればなんともおそろしい話だ。

遡ること数ヶ月前。
ドイツの現地企業で働いていた。
しかし。
人っ子ひとり知らないドイツの田舎街で。
ずっと生きて行く覚悟もなく。
やっぱり。日本に住みたいなー。
そうだ。日本で職を得よう!と思った。

ドイツを撤退すべく、
日本に向けて就職活動。
現職と遠からず的なものと。
まあ。英語を使うという事以外、
現職とは全く関係ないものをネットで3件応募。
まあ。多少なりとも経験を生かして。
っていうやつである。

結果は全滅…。

ま。平社員ごときで。
いくら飛行機代を自分で払うつもりでも。
ドイツにいる人に面接に来て下さいとは言いにくいよな。
そうだよな。
距離があるからな。距離が…。
いや。キョリ。というか自分に問題があるのでは?
とも頭をよぎったが。
まあ、8割方くらいはキョリのせいにした。
というわけで、
ドイツの会社を辞めて日本に戻った。
そんで。無職になった。

そしたら大地震が来た。
人が生きるか死ぬか。
明日は電車は普通に動くのか動かんのか。
という時に。
『御社の求人を見たんですけど〜』
なんていう発言をすると。
マヌケに聞こえるので。
とりあえず、日常が戻った時のために。
履歴書の準備を始めたというわけだ。

生きるか。死ぬか。
水が危ない!買い占めろ〜!
余震だ。放射能だ。
エイッ。ヘリから一号炉に海水投下!
炉よ。冷えてくれー。
と。皆が祈っている時。
そう。私は。1人、部屋で手鏡片手に。
セルフタイマーを押しては。
ニコ〜っと笑ってカシャ。
と、やっていたのだ。
さすがに我ながら、この非常時に。
このマヌケすぎる光景は如何かと思ったが…。
ま。でも。世の中は。
いつだって両極の世界が存在する。
そういうものだ。

写真が撮り終わって翌日。
さーて。画像修正。
まー。便利な世の中だこと。
ちょっと絵画チックなモノクロ写真が出来上がった。

ま。履歴書の写真って、
好き嫌い、デザインが云々。
っていう話ではないけれど。
やっぱり。
自分が納得できないと人に渡せない。

この写真。
常識的には邪道かもしれないけど。
でも。世の中はいつだって。
正解は一つ以上ある。
そういうもんだ。

ま。そんなふうに。
一生懸命写真を作り込んでいるのも。
実は狙ってる会社があった。
社風が欧米並みに自由。
ゲームやソーシャルアプリなんかを作るIT系の会社。
職種は前職と全く関係がないわけでもないかんじで。
多少ながらアピールできる事もありそうな、ないような…。

履歴書は指定のエントリーシートを使う。
当社の製品で一番よいと思うものとか、
その理由を述べよ。とか。改善点を述べよとか。
まー。なんせ質問事項が沢山ある。
その質問に試行錯誤して書き上げること5日。
1週間がかりでエントリーシートが出来た。

『一番よいと思う製品』もなんとか書いたが…

                        * * * * * *

「なーんかさあ。製品。全然興味ないんだよねー」
「じゃあ。応募しなければいいじゃん。
だいたいマユゲはいつもそうなんだよー」
行きたくないっていいながら行くの。
ドイツだってそうだったじゃん」

そういえば。そうだったかも…。
「でも。服装が自由なの〜」
「服装が自由なところ他もあるよー」
「ない。日本。あんまない…」
という会話をあちらこちらですること1週間。

結局。1週間かけて書いた履歴書は。
出さなかった。
そう。ここから私の迷走は始まった。

生活のために金を稼ぐという目的以上に、
好き嫌いを持ち出した。
そして。
なんだか、幼稚な方向へと舵が大きく切られた。
そう。『家族を養う』という立場にない私には。
責任というブレーキ部品も欠如している。

そんなところへ。
好きなことしようぜー。ベイビー。と。
悪魔がささやき始めたのであった…。

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