2012年1月15日日曜日

ドイツ人とのTOKYO観光 - 後編 -

(今までの話→ 前編中編

このドイツ人の問題。
行きたいところがない…。
そして。この人の大問題。
電車に乗らない! 
(参照: ドイツ人とのTOKYO観光 - 前編中編
『お金もかかるしね。歩いていけるところいこうよ』という。
まあ。堅実ドイツ人なのだが…。
東京はね。広いんですよ…。

というわけで。
昼12時に青山のホテルにお迎えに行って以来。
ひたすら歩いている私たち。
ただ今。代々木公園。そして昼14時30。

代々木公園の寒空の下。両手を広げ。
「ンー。気持ちいいねー」
と大喜びのドイツ人を横目に。
私の心は大いに複雑であった…。

また。このパターンか。
昔。オーストラリア人を案内した時も。
一番喜んだのが多摩川の河原だったりし。
で。今回は公園ですか…。

しかーし…。もっと。
東京にしかないものを見て喜んでもらいたい。という
案内人としての責任感というか、欲が沸き上がる。
もはや。それは彼のためでなく。
自分のためである。というのもわかっているが…。

隣の明治神宮でさえ、興味ないから。と却下。
っつうか。やっぱり。君。
ムチャクチャ、はっきり断るよね…。

ならば。原宿の竹下通りは…。というと。
「入ってみる?」
「Oh ,ナイン!(= ドイツ語版 oh no) 」と首を振り
人ごみの写真を撮って。
「ン。ボクはもういいよ」と。

代々木公園のロカビリーを踊る集団も…。
非常に喜んだものの。3分後。
「ン。ボクはもういいよ」と。

あのねぇ。ボクはいいよ。って。
私はそもそもいいんですよ。
行きたい所とか言いなさいよー!全くっ!

一体どうすれば…。
というわけで、私は密かに友達にSOSを送っていた。

『マユゲ、ガンバッテー。今行くからねー』

                   * * * * * * * * * *
『どうしよう』という状態は。
裏を返せば『問題を解く』という、
エンターテイメントである。
1人の『どうしよう』はただの『どうしよう』であるが。
2人の『どうしよう』はいわば。
『謎解きゲーム』という
ちょっとしたエンターテイメントに昇格する。

* * * * * 助っ人、友人A子登場 * * * * * 
ああ。助かったー。
なんかもう。超、気が楽。
友人は「普通のおっさんやね」と。
私に耳打ちしたあと。
にこやかにドイツ語で話しはじめた。
私はもう救出された感じで放心状態。アホ面でついてゆく。
いい友達を持っていて本当によかった。

そして。私たちは。
『どうするー。どうするー』という会話をし。
(ああ。もう。どうするー?って言い合えて超幸せ!)
お茶をすることに。
道中、友人は。ちょっと入っていい?と。
ユニセックスなアクセサリー屋に入っていった。

すると…。ドイツ人は。あれ〜?! 入ってこない…。
男女兼用の物を扱う店でなので入りにくいわけではない。
興味がないから入らないのである。
で。興味がありませんよー。退屈ですよー。
というのを隠さない。
さすが。やっぱり。この辺がちょっと感覚が違う。

                     * * * * * * * * *
そういや…。
ドイツの現地企業で働いていた時。
自由参加のプレゼンがあった。
時間になると皆いなくなったので、
全員、参加しているらしい…。
え〜っ。なんか。興味がないとは言え。
全員いなくなると不安になる、ザ・日本人の私。
そこへ。1人だけ残っているドイツ人の同僚を発見。
「なんか皆いないし…。いいのかなあ?」と私。
「ン!?」と。ドイツ人。
「ほら。みんな。いないしー」

その同僚はキョトンとしていた。
つまりだ。この人は。
皆の行動と自分が何の関係があるのか、
私の言っている意味がわからないのである。
皆が行った=行かなければいけないのでは?
という発想が皆無なのだ。
自分は自分。他人は他人なのである。
いや。日本人だって皆、本当はそう思っている。
でも。その根底に流れている、ゆるぎなきものが。
よくも悪くも個人社会で生きてきた人たちとは違う。

       * * * * *  アクセサリー屋 * * * * *
やはり。放っておくのはちょっと気になる…。
5分後。ちょっと様子みてこよう。ということになり。
私が外に出ると。
あれ〜? 店の前にすらいない。
慌ててあちこちウロウロすると。
少し離れた道路の縁石に座っていた。

「なんかいいのあった?」と彼。
彼はいったって普通であった…。

                    * * * * * * *
「そうそう。友達がやっているお好み焼き屋さんがあるけど行く?
ジャパニーズ、PIZZA、レッカー!(=ドイツ語でおいしいの意)」とA子。
「いいねー。いきたーい。近く?」とドイツ人。
「えーっと。電車でねぇ…」
(ああ…。電車ーーっ!)

当然。却下。

渋谷まで歩き(←また歩いている)、回転寿しへ。
安くて(←これドイツ人重要)おいしいのでけっこう喜んだ。
その後。日本のクレイジーなデパ地下食品売り場とかを見せたが、
反応今ひとつ。
それじゃあと。渋谷のスクランブルへ。
そして。スクランブルを突っ切り、
センター街に入ったとき…。

「もしかして、ここ、ボクのために来てくれている?」とドイツ人。
(えーーっ?!今日はすべて、そのつもりなんですが…)
「ボクはいいよ。すごい人だし」と渋谷もあっさり却下っ。
ここでA子の顔が曇った。
ウーン…。なるほどね。と1人、何度か頷いたあと。
『ドイツ人ぽいね』と。
ボソっと日本語で言い、テンション急降下〜。
(あ〜〜〜〜〜っ!)

ドイツ人は足が疲れたからホテルに戻ることに。
「電車に乗る?」と聞いたらさすがに「乗る」と。
(そうだよー。電車は必要なんだよー)
というわけで、銀座線の渋谷駅へ送りに行った。
結局。彼が今日、一番喜んだのは。
自然あふれる代々木公園であった…。

彼の東京観光はあと7日。
「どっか行くプランとかあるの?自然とか好き?
1時間半も行けば山もあるよ。鎌倉とか高尾山とか」とA子。
「んー。自然とか興味ないから」とドイツ人。
(えーーっ。ちょっと待て。君が好きなのは本当は自然だってばー!)

何かが噛み合ないままの東京一日観光であった。
改札で、別れ際『じゃあ。また』と、握手を交わした。
この握手の味がなんとも言えなかった。
この握手で、3人それぞれが『また』はない。と。
思ったに違いない。
人間の第六感は言葉以上に語るというわけだ。

ここでは割愛するが、義理ハグなんてのもあり、
これもなかなか罪深いのですねえ。

                  * * * * * * * *
片言ドイツ語から解放され。
ハア…。と。
ため息をついた私たち。

おもむろにA子が言った。
「だいたい…。もうちょっとカッコよければ。
こっちのモチベーションも上がるというもんだけどねぇ…」と。
(おおー。やっぱり君もか!)
「そ。そーだよねー。やっぱり!」と。
低俗さ全開の私たちは『喋り足りねー』と言って、
再び夜の渋谷へと入っていった。

今日。問題があったのは、
彼の正直すぎる行動よりも。
私たちの低俗な脳みそだったのかもしれない。

とりあえず、
自分の見た目は磨いておこうと。
やっぱり。しょーもない結論に達した。
そんな一日であった。

でもね。
東京はね。乗り物に乗らないと。
どこにも行けないんだよ。

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