2010年8月7日土曜日

ドイツで鍛える生活 #29

****  哀しき欲の構造 ****

『外国に住んでみたーい』
というバカ丸だしの発想のもと。
私は、ドイツに渡ったり。
南半球、オーストラリアに渡ってみたりと。
数奇な人生を過去に歩んだのであるが…。

その外国とやらで何をしていたかと言うと。
30歳にもなってレストランで。
食器を下げたり、洗ったりする日々で。
気が狂うほどの単純労働。
(たぶん。途中で本当に気が狂っていた)
自由に働ける労働ビザがなく。
職を探す。という、
スタートラインにさえ立てなかった事もよくあった。

ビザが切れる度、外人局と交渉し。
自力で労働ビザを取っていたので。
(労働ビザ。運と情熱で取れたりするもんです)
何でも働ける永住権を持っている人は羨ましかった。

そして。いつだって。
ビザに優遇されるのはエンジニアたちであった。
彼らは会社もバックに付いていて。
会社がビザの手配もしてくれて。
羨ましかったが。
まあ。そんな理系な分野は。
自分には関係のない世界であった。

というのも。
私は30歳くらいまで。
たまーに、カメラマンをやっていたのだが。
アナログ人間だったためデジタルは使わず(←単に使えなかった)
最後までフィルムで通した。
フィルムでもギリギリ納品できた時代であった。
インストールって何?とか言っているような人には。
デジタルの波には乗り切れず。
デジタルに乗って行こうという情熱もなかった。
そして。写真は辞めた。
海外プータロー生活も辞めた。

しかーし。
そんなアナログ人間が。
5年前まで食器を下げたり洗ってたりした人が。
今から数ヶ月前。
ドイツの会社に拾われ再びドイツに来たとき。
そのビザにはいつの間にか。
QAエンジニア。となっていた。
(私は画像処理ソフトのテストする人)
エンジニアって…。
お前が?そんなわけないだろー。
ま。本当にそんなわけはないと思っているのだが…。

とにかく。
なんちゃってだろうとなんだろうと。
QAエンジニアという名のもと。
給料から引かれる大量の税金を。
このまま払い続けていると。
永住権がもらえてしまう立場になってしまった。

あんなに欲しかった。
自由に働ける権利。
今。永住権さえ。
手に入れることが出来る立場になったのであるが。
不思議なことに。
手に入る立場になると。
ぜーんぜん。欲しいと思わないし。
なんというか…、要らんのである。

まだ東京にいたとき。
あんなに大好きだった外国のシュワシュワの水。
スパークリングウォーター、
ゲロルシュタイナーとかペリエ。
ここでは数十セントで買えるというのに。
全然飲まなくなった。

人は。手に入るようになったとき。
もう要らないのだ。と思う。
なんか残念だけど。

そして。私は。
永住権には目もくれず。 
この『鍛える生活』が終わったら、
また日本で。
シュワシュワの水を飲みまくるのであろう。
そして。
ドイツパンの店とかに行くわけだ。

ああ。人の欲の構造とは。
なんたることか…。

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