2011年2月7日月曜日

ドイツで鍛える生活 #52

**** 修行プレイ  ****

辞表を提出したのが前回。
ドイツで鍛える生活 #51
さて。日本的な考え方でいくと。
残りの日々は有給消化に当てられる。
となると。
私は。今年分の有休をまだ使っていないので。
まる一年分、25日余っている。
あれ〜?!
もしや。もう会社に行かなくてよかったりして〜。
と思ったが違った…。

私は2月末の退社なので。
今年は2ヶ月間の労働と換算される。
(会社の1年は1月スタートで有休も1月に支給される)
よって。
有休25日間 ÷ 12ヶ月 x  出社月数2ヶ月 = 4日。
というわけで。使っていいのは4日間。
えー。確かに、理にはかなっているけど…。
一回支給したもの取り上げるんですかー。
日本だったら持ってる有休、無条件で全部使えるけど。
まあ。考えてみればそっちの方がおかしな話か。

4日ねぇ…。と。
有休の申請をしていると。
「東京に帰るのはエキサイティング?」と。
ルーマニア人のボスが聞いてきた。

「えっ。あ。ンー…」
Yesと言うと、ここを去ることができてハッピー。
と言っているのと同等になり。
なんだかとても失礼になる。
しかし。自分で帰ると選択した手前、
Noと言うのもおかしな話で…。
「いやまあ。大きな移動をする時ってのは。
いつでもエキサイティングだよね」
と、曖昧な返事をしてしまった。

「So..... You don't like リューベック」

あー。もー。ズケズケ聞くなあ…。きゃー。助けて〜。
「いやー。そうじゃなくてー」モゴモゴ…。
「まあ。小さい街は生活が家族主体だから、
確かにライフスタイルは違う。そうだね、
きっと私に家族がいたらまた違っただろうけど…」
と。またYesでもNoでもない返事をした。

実際。
日本でも大都市と地方の生活は違う。
『逃げ』だけど、
そういう客観論だけ言いたかった。
リューベックは云々とは語りたくなかった。
私は。ここの住人だけれど。
やっぱり本当の住人ではない…。
客観論以上の事はもっと長く住んでいる人に。
言う権利がある。

すると。
私のYesでもNoでもない返事に対し。
「あー。わかる。ボクもシングルだから」
と、ボスは言った。
「一年目はもう悲惨だった。会社と家だけ。
週末。誰とも話さない日が続いて…。で。
仕方なく、声を出して自分と話してたよ。
そうしないと声を出すチャンスすらなかったしね」
と。恥ずかしそうに彼は笑いながら言った。

なんだか。ハッ。とした。
あっ。彼もそうだったんだ…。
彼は身体も大きく豪快で明るい人である。
そんな人がひとりポツンとこの土地に来て。
そんな日々を1年続けた。
でも彼は。
ルーマニアに戻るわけにはいかない…。


うちの会社には。ドイツ人以外に。
インド人とルーマニア人がいる。
全体の20%くらいが彼らである。
彼らの場合、国に帰れば貨幣価値が違うので。
給料は数分の1から10分の1程度まで下がる。
皆。金のために来ている。
皆。家族にいい生活をさせるために。
ここにいる。
1人で来た私のボスも。
ルーマニアに仕送りしているようであった。

ある同僚は。
私がドイツで育ったから。
ここにいるのかと思っていた。
(ってか。私。ドイツ語片言でしょーがーっ)
別の同僚は。
私の家族がドイツにいるから。
私はここにいるのかと思っていた。
会社のドイツ語の先生は。
彼氏がドイツ人で一緒なんでしょ。
と当たり前のように聞いて来た。

で。私が。いや。
『1人なんだけど…』というと。
皆。口を揃えて。
「えーーーっ。君は何でここにいるの?」と。
いや。まあ。なんと言いますか。
私が来た理由。それは…。

ウーン。ドイツ…。
仕事で単身、ドイツの片田舎って〜。
かなり辛そうだけど。
人生に波風という色を添えるには。
ちと。オモロイんでないの〜。
しゅ、修行じゃー!と。
そんなノリだけであった。

そう。結局。私は。
私の『修行欲』を満たすために来たのである。
ま。いわば。
単なる修行プレイ(←なんのこっちゃ)。
私に覚悟はなかった。

で。結果。私も。
ルーマニア人ボスと同じような経験をした。
そして。自称。日本一。
単身赴任のお父さんの気持ちがわかる女になった。
そう。なんかわかるのよね…。
もー。女なのにーっ。
こんなにも分かってよいものか…。

そして。
貨幣価値が同じとという甘えにすがり。
ま。今回。タイミングもいいし。
ほな。お父さんは帰りましょうか。
というわけだが。
なんだか。この甘えが。
この背負っているものの余りの軽さが。
とっても恥ずかしかった。
守るべきもののためにここにいて。
いつかは帰ろうとしている皆の姿が。
なんだかとっても強くみえた。

私は。修行プレイ。
もー。幼稚すぎるーっ。

ま。そんなこと言っても。
日本に行くと決断したのだから。
とりあえず。親には戻ると言わねば。
ま。親もいい年の老人だし。
無期懲役のような状態で。
ドイツに旅立った娘が一転、帰ってくるとなったら、
まあ。嬉しかろうと。メールをすると…。

「えー。なにそれ。もっと居ろよー」とマユゲ父。
「えー。そうなのー。なーんだ」と拍子抜けのマユゲ母。
「ってか。もっと居てくれないとー。アタシらだって。
行こうかと思ってたのにー」と再び父。
(ってかアンタら、私が海外居る時来たことないじゃん!)

と。いきなり帰ってくるな攻撃。
えー。そんな〜。

友人は。
「帰ってくるって…。そんなんでどうするつもり?」

きゃーっ。
こりゃー。日本の生活も。
鍛える生活になりそうだ。


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